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東京家庭裁判所 昭和61年(少ハ)6号 決定

少年 S・R子(昭44.3.17生)

主文

少年を中等少年院に戻して収容する。

理由

(申請の理由の要旨)

1  少年は、昭和60年7月5日、東京家庭裁判所において、中等少年院送致決定(一般短期処遇)を受けて愛光女子学園に収容され、同年12月16日同少年院からの仮退院を許可されて東京保護観察所の保護観察に付されているものである。

2  遵守事項違反の事実

少年は、上記仮退院に際して、犯罪者予防更生法34条2項所定の事項(以下一般遵守事項という。)及び同法31条3項に基づき関東地方更生保護委員会が定めた事項(以下特別遵守事項という。)、すなわち「家出をやめ、悪い誘いをきつぱりと断り、誓つたとおり他人の信頼を得るようにすること」などの遵守を誓約した。

しかるに少年は、

(一)  昭和61年2月22日、あらかじめ保護観察を行う者の許可を求めることなく上記住所を出奔し、以後同年3月17日までの間、自己の所在を不明にした、

(二)  昭和61年2月22日から同年3月18日までの間、以前同棲したことがあり、暴力組織○○連合○○総家○○一家の組員で、かつ覚せい剤取締法違反及び詐欺教唆の罪により昭和60年6月25日保護観察付執行猶予の処分を受け、その後暴力行為等処罰ニ関スル法律違反及び暴行の罪を犯し、同年8月7日及び昭和61年2月22日に東京簡易裁判所においてそれぞれ罰金刑に処せられるなど犯罪性のあるAに自ら積極的に架電し、同人と数回接触したほか、さらに同人方に数日宿泊するなどして交際した、

(三)  昭和61年2月22日から同年3月17日までの間、女友達方や上記A方などに転々と居住し、もって居住すべき一定の住居に居住しなかった

ものである。

上記(一)の事実は、一般遵守事項4号「住居を転じ又は長期の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察を行なう者の許可を求めること」及び特別遵守事項4号「家出をやめ、悪い誘いをきっぱりと断わり、誓ったとおり他人の信頼を得るようにすること」に、同(二)の事実は、一般遵守事項3号「犯罪性のある者又は素行不良の者と交際しないこと」に、同(三)の事実は、一般遵守事項1号「一定の住居に居住し、正業に従事すること」の前段にそれぞれ違反する。

3  戻し収容を必要とする理由

(一)  少年は、上記仮退院後東京都渋谷区内に居住する両親のもとに帰住したが、親子間に存在していた不信感や感情的あつれきなどの葛藤が払拭されないままであったため、他所での自律的な生活体験を積ませようと考えた父の指示により、昭和61年1月5日埼玉県下にあり、少年自身補導委託先として居住したことのある○○少年塾に預けられることになった。その後少年は、10日ほどで同所から逃走しようとしたため両親のもとに帰宅させられたが、父において少年の受け入れを拒否したため、保護観察所の紹介で同年同月27日から東京都練馬区内にある○○○寮に居住し、スーパーマーケットの店員として稼動することになった。ところが同寮職員の指示に従わなかったことなどの理由で同年2月3日には退寮させられてしまい、やむなく両親と同居するようになったが、次第に両親とのあつれきが強くなったことなどから同年2月22日には家出し、友人方などを転々としながらスナックに就労するなどして不安定な生活を続けていた。このように少年においてはいまだに両親との葛藤が続いているため家庭に安住できないでいるのであって、今後も家出を繰り返して不安定な生活に陥る危険性が高い。

(二)  上記のように少年は、家出期間中スナックで稼動する一方、犯罪性の高いAや覚せい剤歴を有する女友達との交友を復活させているのであって、新たに覚せい剤取締法違反などの罪を犯すおそれがある。

(三)  東京保護観察所においては、保護観察官により直接担当ケースとして少年及び保護者との接触を密に行ない、親子関係の調整を図るとともに、家庭以外にも○○少年塾や○○○寮を提供して少年を居住させ、そこを生活基盤として規律ある生活を送れるように指導、援助してきたのであるが、少年は、自分の思いどおりにならないとそれらの居住先から出奔することを繰り返して所在をくらまし、一向に保護観察になじもうとしない。

(四)  以上のように少年においては、親子間の葛藤が強いことから家庭に落ち着けないばかりか、耐性、自己統制力の欠如など資質的な問題もあって家庭以外の場にも定着できないまま家出放法する傾向があり、社会内処遇の基盤となるべき生活の拠点を定めることができないこと、犯罪性のある者ないし素行不良者のもとに身を寄せてそれらの者と交遊することに高い関心を抱いていること、保護観察に対する態度が逃避的であること等の問題傾向が認められるのであって、保護観察によって少年の改善更生を図ることは著しく困難であり、このまま放置しておくと不良交友に耽溺するあまり覚せい剤使用など新たな非行に及ぶおそれが強いため、この際少年を少年院に戻して収容し、犯罪性のある者や素行不良者との関係を断ち切らせるとともに、再び矯正教育を実施することにより、自己統制力及び規律ある生活態度の涵養を図り、さらにこの間に親子関係を調整し、受け入れ態勢の整備に努めることが適切な措置であると思料する。よって本件申請に及ぶものである。

(当裁判所の判断)

1  少年及び保護者(母)の当審判廷での供述並びに少年調査記録を含む本件記録によれば、

(一)  少年は、中等少年院を仮退院中で保護観察に付されている身でありながら、上記申請の理由の要旨2記載のとおり、一般遵守事項及び特別遵守事項に違反したこと、

(二)  申請の理由の要旨3記載のとおり、親子間の葛藤が強いことや少年自身の資質的な問題から家庭、○○少年塾、○○○寮(少年が収容されていた愛光女子学園でカウンセリングを担当しているBシスターが主催しているボランティア施設。)のいずれにも定着できないまま友人方などを転々とし、そのなかで覚せい剤歴などを有するAら素行不良者との交友関係を復活させる一方、保護観察中でも新たに事件を起こさなければ問題にならないという考え方から、保護観察を等閑に付する態度をとっていること

の各事実がまず認められる。

2  さらに少年調査記録によれば、少年は、

(一)  3~4歳の頃まで拒食症状を呈していたため、親のほうで無理に口をあけて食べさせる状態が続いたこと、姉は初めての子として、弟は初めての男子としてそれぞれ可愛がられるのに自分は度外視されるという意識を抱いていたことなどから受容欲求が満たされず、少学校低学年の頃には母や姉の持ち物を隠したりするようになったこと、

(二)  小学校3年生の頃には、級友の学用品を盗んだり、店頭から文房具を万引するようなことを続けたため、父からベルトの金具で頭を殴られ、何針か縫う傷を負わされたり、母からも蹴られるなど両親による激しい折檻を繰り返し受けるようになったが、少年のほうは一晩中公園をさまようなど家から逃れようとする傾向を示しはじめたこと、

(三)  小学校高学年の頃にも万引や家財持出しを繰り返し、両親の叱責を恐れて帰宅しないようになり、幾度となく警察で保護されたこと、

(四)  中学校1年生の中途から性格矯正などの目的でスイスに留学することとなったが、同国での保護者となった弁護士方からも金品を盗むなど問題行動は続き、帰国後の昭59年2月には家出してしまったため、ぐ犯として送致され、入鑑後の同年4月11日保護観察に付されたこと、

(五)  上記保護観察処分後は、1週間ほど家出したため、第2回目のぐ犯送致となり、同年5月18日在宅試験観察決定となったこと、

(六)  同年6月上旬にはまたもや家出したため、第3回目のぐ犯送致となり、いったん決定された補導委託による試験観察は審判直後に少年が逃走したため功を奏さなかったけれども、まもなく身柄が確保され、同年7月17日補導委託(○○少年塾)による試験観察が開始されたこと、

(七)  昭和60年にはいると少年が高校に合格し、新たな環境が用意されたことなどから同年3月22日第2及び第3回目のぐ犯事件は併合のうえ不処分となり、私立○○高校に進学したが、早速アルバイトやボーイフレンドのことで両親と諍いを起こすようになって同年4月22日には家出し、覚せい剤使用歴のある女友達方で寝泊りするようになったこと、

(八)  そこで第4回目のぐ犯送致がなされ、同年6月6日、家出をしないことなどを遵守事項として在宅による試験観察決定を受けたが、その3日後にはまたもや家出し、同月11日頃から約20日間本件戻し収容申請事件で問題となったAと同棲するなど放縦な生活を送るようになったため、同年7月5日、本件の原決定となる中等少年院送致決定(短期処遇)を受けるに至ったこと

の各事実が認められる。

3  少年の問題点

少年の場合、前項におけるような生育歴、非行歴に徴すると、幼児期から甘えや受容欲求が満たされておらず、家族生活の重要な基盤である両親との信愛関係が醸成されていなかったものと思われる。そのため両親への反発心や疎外感などから家族の持ち物の隠匿、万引、家出といった問題行動を早くから惹起せしめ、そのなかで勝手気ままに場当り的な行動をする傾向を身につけて行ったもののようであり、少年における感覚的な基準に基づく行動傾向、ルール逸脱の姿勢は極めて根深いものであるといわざるをえない。

また、最近の家出の動機としては、両親との葛藤だけではなく、たび重なる家出に伴なう不良交友関係の拡大のなかで培われたと思われる自由きままに生活したいという意識がかなり強く働いているものと認められる。このことは別の視点からみれば自立の履き違いであって、少年に正常な勤労の義務感及びそれを持続させうる耐性、生活全般に対する道徳観念が培われていない現段階においては、正常な自立を望むべくもなく、覚せい剤使用歴のある者が多い交友状況のなかで厭世的な気分になって薬物使用に及ぶ危険性は極めて高い。

保護環境についてみると、とりわけ父親は少年の素行が良くならないかぎり家庭に入れたくないという態度に終始し、素行が良くなるためにはまず家庭の側がどうすべきなのかという点の配慮に欠けている。また、たび重なる家出に伴って不良交友の範囲が拡大し、少年自身両親とは別個の世界を築きつつあるため、相対的に両親の感化力、指導力が低下しつつあることも否めない。さらに家庭以外の社会資源についても、せっかく保護観察所が尽力したものの、少年自身の目が不良交友に向けられがちであったため功を奏さなかったことは、その主張にかかるとおりであり、他にも有効な資源は見当らない。

なお、少年は、当審判廷において、休学中の私立○○高校に復学したいので、できれば帰宅させて欲しい旨陳述するが、昭和60年4月の同校進学以降たび重なる家出と前回の収容処分のためほとんど登校していない状熊であること、とりわけ同年6月6日の試験観察決定後、少年のほうから登校を渋り、その3日後には家出したような事情に照らすと、少年の決意がいつまで持続できるのか甚だ心許ないものといわざるをえない。

4  前項において指摘したような少年の問題点のほか、保護観察の遵守事項違反の態様、程度等一切の事情を勘案すると、少年は、今後も保護観察から離脱したまま覚せい剤取締法違反の罪などを犯すおそれが大きく、この際少年を中等少年院に戻して収容したうえで、改めて少年の意識全般に対する強力な働きかけを行なう必要があるものと思料する。

5  なお、本決定は、決定時の少年の年齢が17歳0月であり、少年院法11条1項に定める法的な収容期間の経過までかなりの年月があるのに、別段戻し収容の期間を定めていないが、その理由は、戻し収容決定によって法定の収容期間を制限することは相当でなく、法定の期間内において再度の仮退院後の保護観察を含む矯正教育を弾力的に施せば足りるものと考えたからである。

6  よって犯罪者予防更生法43条1項、少年審判規則55条を適用し主文のとおり決定する。

(裁判官 白石研二)

参考 戻し収容申請書

戻し収容申請書

昭和61年3月27日

東京 家庭裁判所支部殿

関東地方更生保護委員会

下記の者は、少年院を仮退院後東京保護観察所において保護観察中の者であるが、少年院に戻して収容すべきものと認められるので、犯罪者予防更生法第43条第1項の規定により申請する。

氏名

年齢

S・R子

昭和44年3月17日生

本籍

東京都渉谷区○○町××

住居

東京都渉谷区○○町××-××(現在地東京少年鑑別所留置中)

保護者

氏名

年齢

S・H

大・<昭>13年1月26日生

住居

東京都渉谷区○○町××-××

本人の職業

高校生(休学中)

保護者の職業

会社社長

決定裁判所

東京家庭裁判所 - 支部

決定の日

昭和60年7月5日

仮退院許可委員会

関東地方更生保護委員会

許可決定の日

昭和60年12月2日

仮退院施設

愛光女子学園

仮退院の日

昭和60年12月16日

保護観察の経過及び成績の推移

別紙「保護観察の経過」(編略)のとおり

申請の理由

別紙「申請の理由」のとおり

必要とする収容期間

参考事項

添付書類

1 本人に対する質問調書謄本 2通

2 関係人に対する〃 2通

3 引致状謄本 1通

4 少年院仮退許可決定書謄本 1通

5 交友関係に関する警視庁防犯部少年第二課長からの回答書の写し

6 Aの前科等についての資料の写し

なお、当委員会の審理開始決定に伴う留置期限は、昭和61年3月28日である。

申請の理由

少年は、当委員会の決定により、その仮退院期間を昭和64年3月16日までとして、昭和60年12月16日愛光女子学園からの仮退院を許され、東京都渋谷区居住の保護者(父)のもとに帰住し、以来東京保護観察所の保護観察下にあるものである。

少年は、仮退院に際して、犯罪者予防更生法第34条第2項に定める事項(以下「一般遵守事項」という。)及び同法第31条第3項の規定に基づき当委員会が定めた事項(以下「特別遵守事項」という。)の遵守を誓約したものであるが、昭和61年3月19日付けで、東京保護観察所長から戻し収容の申出がなされたので、関係書類を精査して検討するに、下記1記載のとおり、遵守すべき事項を遵守していない事実が認められ、かつ、下記2記載のとおり、既に、保護観察による指導監督、補導援護の方法をもってしては、その改善更生を図ることは困難な状況にたち至っているものと認められるので、本件申請を行うものである。

1 遵守事項違反の事実

少年は、

(1) 昭和61年2月22日、あらかじめ、保護観察を行う者の許可を求めることなく、表記住所を出奔し、以後同年3月17日までの間、自己の所在を不明にした

(2) 昭和61年2月22日から同年3月18日までの間、以前同棲したことがあり、暴力組織○○連合○○総家○○一家の組員で、かつ、覚せい剤取締法違反及び詐欺教唆の罪により昭和60年6月25日から保護観察付執行猶予中の身であり、その後、暴力行為等処罰に関する法律違反及び暴行の罪を犯し、昭和60年8月7日及び昭和61年2月22日に東京簡易裁判所においてそれぞれ罰金刑に処せられるなど犯罪性のあるAに、少年は、自ら積極的に電話をかけ、同人と数回接触したほか、さらに、同人宅に3回位宿泊するなどして交際した

(3) 昭和61年2月22日から同年3月17日までの間、住所不詳の女友達方、東京都足立区○○×-××-×-×××C子方及び東京都豊島区○町×-××A方などに転々と居住し、もって居住すべき一定の住居に居住しなかった

ものである。

上記(1)の事実は、一般遵守事項第4号「住居を転じ又は長期の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察を行う者の許可を求めること」及び特別遵守事項第4号「家出をやめ、悪い誘いをきっぱりと断り、誓ったとおり他人の信頼を得るようにすること」に、同(2)の事実は、一般遵守事項第3号「犯罪性のある者又は素行不良の者と交際しないこと」に、同(3)の事実は、一般遵守事項第1号「一定の住居に居住し、正業に従事すること」の前段に、それぞれ違反する。

2 戻し収容を必要とする理由

(1) 少年は、仮退院後東京都渋谷区居住の保護者(父)のもとに帰住したが、親子間に不信感や感情的あつれきがあるなどの葛藤が根深く、保護者が、当初から少年を家庭に受け入れることには、難色を示したこともあって、自律的な生活の体験を積ませるため、暫定的に埼玉県大里郡所在の○○少年塾に預けられることになり、昭和61年1月5日父に伴われ同塾に赴いた。

しかし、少年は、同塾に落ち着くことができず、同月15日、無断で同塾を飛び出そうとして同塾職員に見つかり、結局、同日のうちに保護者のもとに帰宅させられた。その後、保護者は、ますます少年に対する不信感を強め、「親の言うことに従えない子供は家に置いておくことは出来ない。」と、家庭以外の場を、少年の更生の場とすることを強く望み、家庭への受け入れを拒否したため、少年は、同月27日から、担当保護観察所の紹介により、東京都練馬区所在の○○○寮で生活することになった。入寮後、少年は、スーパーマーケットの店員として就労を開始するなどしたものの長続きせず、無断欠勤するなどして同寮職員の指導に従わなかったため、同年2月3日、退寮を余儀なくされるに至った。そして、同日からは、自宅において、同年4月からの学業の再開に期すことになったが、次第に、保護者との衝突が顕著となり、同月22日ついに家出し、以降、友人宅等を転々としながら、スナックに就労するなどして、不安定な生活を続けていたものである。また、家出後は、かつて同棲していたことのあるAのほか、覚せい剤歴を有する者などの素行不良者と交際していたことが認められ、そのぐ犯性は日増しに顕著になっている。

(2) 東京保護観察所においては、保護観察官の直接担当ケースとして担当保護観察官が少年及び保護者との連絡や接触を密に行い、親子関係の調整を図るとともに、家庭以外にも更生の場として塾、又は寮を開拓して少年に提供して居住させ、それを生活基盤として規律ある生活を送るよう、少年に対し指導,援助を続けてきたにもかかわらず、少年は、自己の思いどおりにならぬとそれら居住地を出奔することの繰り返しで、与えられた機会を生かそうとせず、結局は、自己の所在を不明にして、保護観察から離脱し、気ままな生活をしていたものである。

(3) 保護者は、少年が愛光女子学園に在園中から、それまでの行状をかんがみ、少年が再び家出あるいは非行に走るのではと非常に懸念するあまり、少年が仮退院して、自宅に帰住した後も、家庭において少年を指導監督することを望まず、家庭以外に少年の更生の場を求めようとする姿勢が強かった。そして、少年が与えられたいずれの場所でも落ち着けなかったため、ますます少年の改善更生意欲に疑問を持つに至り、現在においては、少年の指導監督に全く自信を失い、他に適当な方法も得られない状態にあるので、保護者の保護能力にはこれ以上の効果を期待することはできない。

以上のとおり、少年の遵守事項違反の程度、態様及び保護者の保護能力、さらには、親子間の葛藤が強いことから家庭に落ち着けず、また、耐性、自己統制力の欠如などの資質的な問題もあって家庭以外の場にも定着できず、家出放浪する傾向があることから、社会内処遇の基盤となるべき生活の拠点を定めることができないこと、その上、自己の所在を不明にして保護観察から離脱するなど、少年の保護観察に対する態度が逃避的であること等から検討するに、保護観察によって少年の改善更生を図ることは著しく困難な状況にあると認められ、このまま放置すれば、不良交友に耽溺し、覚せい剤の使用などより重大な非行を重ねるおそれも強いと考えられるので、この際、少年を少年院に戻して収容し、犯罪性のある者や素行不良者との関係を断ち切らせるとともに、再び矯正教育を実施することにより、自己統制力及び規律ある生活態度の涵養を図り、さらに、この間に親子関係を調整し、受け入れ態勢の整備に努めることが適切な措置であると思料する。

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